公開日 2009年03月12日
更新日 2014年03月16日
森のちからを利用する治山(ちさん)工事
森林には、水源のかん養(雨水を山の中にためて、少しずつ下流へ流すダムのような役割)、土砂の崩壊防止(木の根っこが山の土をしっかりおさえて、山くずれを防ぐ役割)、土砂の流出防止(山から落ちてくる石や土を木が止める役割)、大気保全(二酸化炭素を吸収する役割)などさまざまな機能があり、日本の「森林の公益的機能」の評価額は75兆円ともいわれています。
治山事業は、そのような森林の機能の維持・向上を目的として適切な工作物も取り入れて補強をし、それによって維持される森林で私達の生活を守るという思想のもとにすすめられてきました。
このページでは、「治山工事がどのようにしてはじまったか」について紹介します。
日本列島の宿命?
日本は海からつき出た長い壁のような列島です。
壁のような列島に低気圧がぶつかり、大雨を降らし、降った雨水は急な斜面をかけおりて、それが洪水や山くずれの原因となります。
治山工事はこのような災害をできるだけ防ぐことを目的としています。
写真:高知県吾川郡仁淀川町峯岩戸(災害発生時)
ほおっておけば・・・。
大雨列島。
時には、けたはずれの集中豪雨がやってきます。時には、森の力も、ふんばりきれないこともあります。
とくに、森が弱っていたりすると、山くずれや土石流が住宅地をおそうこともあります。ザックリとえぐられた山は、ほおっておけばキズはもっと深くなります。
写真:手入れが遅れて荒れてしまった森
森の力を利用する!
はだかの山では、雨水は土の上をいっきに走ります。
台風のたびに土手が破れて家や水田を流されていた祖先達は、ある日、はっと気がつきました。「そうだ、山に木を植えよう」。
祖先達は、木を植えるために山の土を大切に守りました。山の土に育った森は雨水を吸い込み、あみのような根で山の土を守りました。 「森を育てれば、森が山を守ってくれる」。
これが「治山(ちさん)」の始まりだったのです。
森の木に山を守らせる!
山が多い日本に育った「治山」の技術。祖先から受けついだ大きな知恵。そのひけつは「森の木に山を守らせる。」ことです。
まず山のキズあとに、木が生きるための安定した土台をつくります。急な斜面、緩い斜面に合わせた工事の計画を立てて、強く安定した土台をつくるのです。そのあと、山の土が雨で流れないように、木の柵で土をとめて木を植えます。
草や木が大きくなれば、自然の山にかえるのです。
写真:高知県吾川郡仁淀川町峯岩戸(上段:法切工完了時 下段:法枠工完成時)
おまけ
よく似ている治山ダムと砂防ダム!
・治山事業は「森林の造成若しくは維持に必要な事業」
・砂防事業は「土砂の生産を抑制し、流送土砂を抑止・調節する事業」です。
よく似ていますが、目的や機能が違っているのです。
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