公開日 2023年12月19日
1 南海トラフ地震臨時情報とは
南海トラフでは、過去に想定震源域の東側と西側で時間差で、大規模地震が発生する事例があります。
- 1854年 安政東海地震と安政南海地震
南海トラフの東側で地震が発生した約32時間後に、西側でも地震が発生 - 1944年 昭和東南海地震と昭和南海地震
南海トラフの東側で地震が発生した約2年後に、西側でも地震が発生
図:過去の南海トラフ地震(Mはモーメントマグニチュード)
過去の事例のような時間差で発生する大規模地震に対して、備える必要があります。
南海トラフ地震臨時情報(以下、「臨時情報」といいます)は、南海トラフ全域を対象に地震発生の可能性の高まりについてお知らせするもので、想定震源域内で大規模地震や地殻変動など異常な現象が観測された場合に、気象庁より発表されます。例えば、南海トラフ沿いの東側で地震が発生し、西側でも地震が続発する(後発地震)可能性が高まった場合などに発表されます。
臨時情報が発表された際は、後発地震に備え、国や県・市町村などからの呼びかけに応じた防災対応をとりましょう。
2 臨時情報が発表される「異常な現象」とは
臨時情報が発表される異常な現象には、「半割れケース」「一部割れケース」「ゆっくりすべりケース」の3通りがあります。
半割れケース
南海トラフの想定震源域でモーメントマグニチュード (以下、「M」という)8.0以上の地震が発生した場合
図:半割れケースのイメージ
(内閣府、南海トラフ地震の多様な発生形態に備えた防災対応ガイドライン【第一版】)
一部割れケース
南海トラフの想定震源域でM7.0以上、M8.0未満の地震が発生した場合
図:一部割れのイメージ
(内閣府、南海トラフ地震の多様な発生形態に備えた防災対応ガイドライン【第一版】)
ゆっくりすべりケース
ひずみ計等で有意な変化として捉えられる、短い期間にプレート境界の固着状態が明らかに変化しているような通常とは異なるゆっくりすべりが観測された場合
図:ゆっくりすべりのイメージ
(内閣府、南海トラフ地震の多様な発生形態に備えた防災対応ガイドライン【第一版】)
3 臨時情報の種類と発表の流れ
臨時情報の種類
臨時情報は、南海トラフ沿いで発生した異常な現象に応じて、キーワードを付して発表されます。
例えば、南海トラフ地震臨時情報(巨大地震警戒)といった形で発表されます。
キーワード | キーワードが付記される条件※ |
---|---|
調査中 |
|
巨大地震警戒 | 南海トラフの想定震源域でM8.0以上の地震が発生した場合(半割れケース) |
巨大地震注意 |
|
調査終了 | 巨大地震警戒、巨大地震注意のいずれにもあてはまらない場合 |
※より詳細については、気象庁ホームページを参照してください。
臨時情報発表の流れ
臨時情報は下図の流れで発表されます。
図:臨時情報発表までのフロー
(内閣府、南海トラフ地震の多様な発生形態に備えた防災対応ガイドライン【第一版】)
4 事前避難対象地域
事前避難対象地域とは、「後発地震に伴う津波に備えて、事前に避難することにより、より安全性を高めることができる地域」のことで、地域の実情に応じて市町村が設定します。
臨時情報(巨大地震警戒)発表時、市町村は事前避難対象地域に避難指示等を発令し、地域内の住民に事前の避難を呼びかけます。
また事前避難対象地域は、事前避難対象者の特性に応じて、「高齢者等事前避難対象地域」と「住民事前対象地域」の2種類に分けられます。
事前避難対象地域の種類 | 事前避難対象者 | 避難指示等の発令※ | 県内における地域設定※ |
---|---|---|---|
高齢者等事前避難対象地域 | 高齢者などの要配慮者 | 高齢者等避難 | 30cm以上の津波浸水が、地震発生から 30分以内に生じる地域を基本に各市町村が設定 |
住民事前避難対象地域 | 健常者を含む全住民 | 避難指示 | 上記のうちから、地域の実情に応じて、各市町村が設定 |
※本表では、基本的な考え方を示しており、市町村によって異なる場合があります。
図:事前避難対象地域の概念図
(内閣府、南海トラフ地震の多様な発生形態に備えた防災対応ガイドライン【第一版】資料を改変)
県内における令和4年2月1日現在の事前避難対象地域の設定状況は以下のとおりです(全市町村設定済み)。
詳細については、各市町村へ問い合わせください。
5 臨時情報発表時の防災対応
臨時情報が発表された場合、国や県・市町村などから住民へ後発地震に備えるよう呼びかけがあります。
呼びかけの内容は南海トラフ沿いで発生した異常な現象に応じて異なります。
図:住民、企業の防災対応の流れ
(内閣府、南海トラフ地震の多様な発生形態に備えた防災対応ガイドライン【第一版】資料を一部改変)
6 南海トラフ地震防災対策計画について
津波浸水想定が30cm以上の地域の事業者等(以下の作成義務者を参照)は、南海トラフ地震対策特別措置法に基づき、従業員や顧客の安全を確保するため、津波からの円滑な避難を確保する事項等を定めた南海トラフ地震防災対策計画(以下、「対策計画」といいます)の作成が義務づけられています。
令和元年5月に、国は南海トラフ地震特別措置法に基づく基本計画を改定し、各事業者の対策計画に臨時情報発表時の対応を盛り込むことが義務づけられました。
臨時情報を活かして減災につなげるためにも、各事業者の皆様には、できるだけ早期に計画を見直していただく必要があります。
対策計画作成義務者一覧表
対策計画に盛り込む事項
- 津波からの円滑な避難の確保
- 南海トラフ地震の時間差発生等における円滑な避難の確保
- 防災訓練に関する事項
- 地震防災上必要な教育および広報に関する事項
対策計画の作成手引きと作成例
7 その他
内閣府 防災情報のページ 南海トラフ地震対策
南海トラフ地震対策や臨時情報発表時の対応をまとめたガイドライン(南海トラフ地震の多様な発生形態に備えた防災対応検討ガイドライン)が掲載されています。
気象庁 南海トラフ地震について
南海トラフ地震や臨時情報について説明されています。
内閣府・気象庁 解説リーフレット
内閣府・気象庁が臨時情報の解説リーフレットを作成しました。
南海トラフ地震臨時情報解説リーフレット
「南海トラフ地震の多様な発生形態に備えた防災対応」説明動画(内閣府)
南海トラフ地震が発生した際に発表される南海トラフ地震臨時情報やその時にとるべき防災対応について説明されています。
南海トラフ地震の多様な発生形態に備えた防災対応
南海トラフ地震の多様な発生形態に備えた防災対応動画(ドラマ版)(内閣府)
南海トラフ地震が発生した際に発表される南海トラフ地震臨時情報やその時にとるべき防災対応について説明されています。
「南海トラフ地震 どうなる?どうする?時間差で起こりうる次の地震への備え」
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